7月10日、東京都では感染者数が243人とこれまでの最多数が報告された。このうち30代以下の割合が80%であり、43%のヒトが感染経路不明という。要するに若年層の感染者が多くて、無症状や軽症者が多いという。この報道を聞くと、知らない間にどこで感染したか不明の患者が多く存在するということで、高齢者はますます恐怖心が増して、散歩などの外出さえも控えるようになっている。現に、その結果足腰が弱って歩行にも支障が出るほど影響しているのだ。
感染経路不明の患者の存在は、保健所職員である保健師による聞き取り調査の結果であり(人手不足で著しく多忙と報道されている)、あくまでも患者本人の意思が尊重されている。自分にとって都合の悪く知らせたくない情報は伝えなくても済んでしまう。国が違うと、情報の内容も異なっている。韓国では患者が使用した駅名や電車の時刻までネットに情報を出して注意を喚起し、心配の者はPCR検査を実施して感染の有無を徹底的に確認できたという。個人情報は特定されないが、情報の取り扱いには大きな隔たりの存在を感じる。
そこで毎日不特定多数の患者を診察している筆者は、ある意味においてハイリスクな環境で生活しているのだが、基本的な感染予防対策を実施しているだけで、幸いなことに新型コロナウイルスにはいまだ感染していない。だから感染経路不明という言葉に違和感があるのだ。
本当に自宅から駅、電車内、会社までの歩行途中で感染しているのか不明である。少なくとも満員電車内で感染するのであれば、爆発的に感染者が増えると思われる。社内感染であれば、クラスターの存在が判明すると考えられる。一部ではそのような報道もあったが。
やはり3密の環境要因が最も多いと想像されるのだが。感染者総数が2万人を超え、これだけ感染者が増加しているのだから、そろそろもう少しきめ細かな、例えば年代別の感染状況の実態報告があっても良いと思うのだが。コロナ感染は個人で防止対策をとる必要はあるが、日常生活を過剰自粛して体力低下などの弊害をもたらすようであれば、本末転倒である。コロナ対策の現場は超多忙であるが、ウイズコロナの時代を生き抜くためにもきめの細かい適切な情報を出していただくことを期待したい。
入戸野 博