新生児から乳児期の気になる症状について

赤ちゃんの皮膚をよくみましょう

14.仙尾部脊髄脂肪腫による下肢運動麻痺について

普段はじっくりとあまり見ないと思いますが、赤ちゃんのお尻に注目してください。お尻といっても肛門から数センチ上の骨盤の皮膚です。お尻の割れ目の線が少しだけ曲がっていたり、赤い血管腫、紫色の母斑(ホクロの一種)、小さな穴やへこみ(ディンプル:へこみ)などが存在していたり、何らかの異常(不対象)を感じたらネットで仙尾部脊髄脂肪種の病名を検索してください。

仙尾部脊髄脂肪種は、生後数か月以内であれば超音波検査でも発見できることがあります。1歳前の小児や年長児では麻酔を投与してCT検査やMRI検査で診断できます。早く発見して適切な手術を実施すれば、正常な歩行が可能となりますし、尿の垂れ流し(神経因性膀胱)や下肢の知覚異常、足変形、脚長差などにならずに済みます。年長児まで放置していた場合には、上記の様々な症状が出現し、その時に手術をしても改善しないこともあります。

小児科のかかりつけ医を受診し、小児専門の脳外科を紹介してもらいましょう。これまでに私は1例経験していますが、前医は精密検査をすすめなかったようです。外見は軽度の異常なので見逃されることが多いと思います。多くの医師はこの疾患のことをあまり知らないようですが、手術所見をみると脂肪腫の存在を確認できてお尻の皮膚の軽度の外観との相違に驚きます。発生頻度は0.25/1000程度で女児にやや多いようです。脊髄脂肪種は二分脊椎の一病態であり、無症状でも早期手術が薦められています。

15.肛門スキンタグと見張りイボについて

おなかを上にして肛門の12時の方向と6時の方向に、三角形の突起(トリのトサカのような外観)があることを、赤ちゃんのオムツ交換時にお母さんが見つけることがあります。良く痔と間違えられています。

12時の方向に見られるのが肛門スキンタグで、通常は無症状。日本語の正式な病名がないようです。女児に多いような印象があります。硬便や太い便が出る場合に大きさが多少変化することがあり、時に肛門が切れて出血することもあります。特別な治療は不必要です。「排便後にぬるま湯にお尻をつける」「入浴時によく洗う」などで十分です。発赤して大きく腫れた場合には軟膏療法を行うこともあります。

他方、6時の方向に見られる見張りイボは裂肛の原因となる便秘の治療が必要になります。両者ともに手術は必要ありません。

16.たかが水イボされど水イボ

水イボは伝染性軟属腫ウイルスの感染で起こり、子供から子供に感染します。放置しておいても自然に免疫ができて小学校に入学するまでには治癒することが多いので、様子を見ることを推奨する医師が多いようです。しかし目の周りに出現した場合には、放置しておくと巨大になることがあり、除去後の皮膚の傷跡が残るためにイボが小さいうちに除去した方が良い場合もあります。

また、自然治癒するので放置するように指導する医師もいますが、時にかゆみのために皮膚をひっかいて化膿してオデキとなる場合もあります。特別なピンセットで除去する場合には事前に劇薬である痛み止め予防の麻酔のテープを貼ります。このテープはショックを起こす危険性があるので、必ず診療所内で待機して60分後にイボの除去を始めます。除去後には抗生剤の付着した絆創膏を貼って、皮膚の雑菌による感染予防をし、入浴後にも感染予防のために抗生剤の軟膏を2日間ほど塗ります。

プールに入ってビート板を使用すると、両側の腋下部に感染するようです。ハト麦エキスによる内服療法は数か月間と時間がかかりますが、苦痛がないのでイボが数十個から百個と多数の場合には良いと思います。

大人の水いぼは、免疫不全の存在も疑われます。

17.脂漏性湿疹

生後間もなくから3か月くらいまでに、頭や顔、胸にできる皮膚炎です。黄色の湿疹やかさぶたができて乾燥することもあります。赤ちゃんが皮脂を多く分泌するためにできます。入浴時に石鹸で、頭はシャンプーで皮脂を洗ってからよく石鹸分を洗い流します。一度に取るのではなく、毎日少しずつ皮脂を取り除いていきます。時にステロイドの軟膏を塗ることもあります。

18.いろいろな赤あざ(血管腫)

生まれつき赤ちゃんの顔に赤あざがあると心配しますが、大部分のものは自然に消えていくものです。瞼などにできるものはサーモンパッチで、境界が不鮮明であり1~3歳で消えます。

首の後ろにできるものはウンナ母斑で境界が不鮮明です。うなじや頭の後ろの赤あざの大部分は自然に消えます。単純性血管腫は盛り上がりのない赤あざであり、自然消退は期待できないのでレーザー治療が期待されます。海綿状血管腫は年齢とともに大きくなる柔らかな皮下の腫瘤で、盛り上がりが少ないものは外科的切除をする。血管腫が巨大の場合には血小板が減少することがあります。

赤いあざは基本的に6歳ころまでに自然消退することが多いので、早期に治療をする必要はありません。特に赤いあざはレーザー治療が効果的なので、6-7歳以降にも残っている場合には皮膚科で相談してみます。

単純性血管腫でも片側顔面の三叉神経領域に広くみられる場合にはスタージーウエーバー症候群で、てんかんや片麻痺などの神経症状、牛眼や緑内障を合併することがあります。手足に広範にあるものはクリッペルーウエーバー症候群が考えられます。まぶたのイチゴ状血管腫では、弱視になる可能性があり、唇や鼻孔では大きくなると呼吸困難になることもあります。巨大なイチゴ状血管腫に血小板減少が合併したカサバッハーメリット症候群もあり、放射線療法が有用です。

蒙古斑は、灰青色の色素斑でおもに臀部に認めるが他の部位(異所性)にもあります。有色人種に特有ですが、生後2-3年で消えます。

入戸野 博