新生児から乳児期の気になる症状について

心配ない黄疸と心配な黄疸

1.赤ちゃんの尿と便の色に注意しましょう。黄色のしろ目は黄疸です

基本的に赤ちゃんの便の色は黄色です。しかし時として、何らかの病気の時には薄い黄色になったり、赤い点状や赤い塊(血液)が混ざったり、灰色や白色になったり変化することがあります。また乳児では緑色になったりすることもあります。

お母さんが妊娠中にある種の薬剤を服用していたり赤ちゃん自身が抗菌剤の投与を受けたりした場合に、母乳栄養児では赤ちゃんがビタミンK欠乏症になり、へそ、鼻、腸、頭の中に出血することがあります。外から見えるところに出血すれば気づきやすいのですが。

出血予防のために、すべての赤ちゃんには生後直後からビタミンKのシロップを複数回飲ませます。頭の中に出血するとけいれんを起こして危険な状態になりますし、後遺症を残すこともあります。

しかしビタミンKシロップを普通に飲んでいても、胆汁が十分に流れない病気(胆汁うっ滞症)だとビタミンKの吸収が障害されて出血することもあります。肝臓の病気のために胆汁の流れが悪くて頭の中に出血し、けいれんを起こして肝臓の病気(胆道閉鎖症)が見つかることもあるのです。

便の色が薄い黄色、灰色または白色の時は胆汁が十分に流れていないことが考えられます。腸に胆汁が流れないと赤ちゃんの尿は濃い黄色や茶色に変化しますし、しろ目が黄色くなります。

胆汁が流れにくい肝臓の病気のうち、胆汁が流れる管である胆管が開いている病気の代表は新生児肝炎や家族性進行性胆汁うっ滞症などがあります。他方、胆管がつぶれて胆汁が流れない病気には難病の胆道閉鎖症(BA)という病気があり、およそ1万人に一人くらいの頻度で発症します。BAは早期手術が必要ですが、手遅れの場合には肝硬変に進展して2歳までに肝不全で死亡しますので肝移植が必要になることがあります。

大部分のBAの発症は生後1か月頃までに胆管が急速に詰まる病気で、原因は不明です。生直後の便の色は黄色だったものが、ある日から薄い黄色になり、次第に白色となっていきます。このために赤ちゃんの便を注意してみていないと気づかないこともあります。大部分の症例は生後1か月頃には発症していることが考えられます。

しかしオムツに排泄された白い便に茶色の尿がかかると、外見は黄色に見えて異常に気付かないこともありますので注意が必要です。また皮膚やしろ目が黄色くなります(黄疸)ので、赤ちゃんのしろ目の色に注意しましょう。現在では母子手帳に便のカラー色が載っていますので、1か月健診の前には確認してください。尿がかかっていない便の色を確認するのがポイントです。

また、乳児の便が下痢気味で緑色になって心配して小児科を受診する場合があります。元気で食欲もあり、体重増加も順調であれば一過性の変化で心配ないと思います。おそらく便のペーハーが関係していて、ビリルビンという便中の黄色い色素が緑色のビリベルジンに変化したと思われます。

柑皮症(かんぴしょう)はミカンなどの柑橘類をたくさん食べると、カロチン色素により手のひらや足底などの皮膚が特に黄色くなりますがしろ目は黄色くならずに黄疸と区別ができます。また、胆汁が全く流れずに、白い便が排泄されているBAの患児であっても、お母さんがオレンジジュースを飲んで母乳を与えたら、ジュースに含まれているカロチン色素が母乳に移行して、これにより乳児が黄色の便を排泄した症例が報告されていますので注意が必要です。

母乳を飲んでいる乳児がすべて母乳性黄疸を発症するわけでもないことを知るべきです。茶色の尿や白っぽい便が一度でも見られたら、たとえ母乳を飲んでいても母乳性黄疸と短絡的に考えてはいけません。とにかく黄疸があって尿や便の色が気になる場合には、オムツを持参して実物を小児科医に見せることが重要です。

2.母乳性黄疸について

母乳中のある成分は、赤血球が壊れてできたビリルビンの抱合をするグルクロン酸抱合酵素を阻害する作用があります。このため、抱合されなかった非抱合型のビリルビンは胆汁中に流れにくくなり、血液中に逆流して黄疸となります。

母乳性黄疸では、生後1か月を経過しても黄疸が存在して長引きます(遷延性黄疸)。この場合には血液中に増加するビリルビンは非抱合型(間接型)であり、尿にも排泄されにくいために尿は黄色に着色しません。母乳性黄疸では抱合酵素がすべて阻害されるわけではないので、一部の抱合されたビリルビンが胆管に排泄されるために便の色は薄い黄色や白色にはなりません。

ですから母乳性黄疸の場合には、手術が必要な胆道閉鎖症(BA)のような濃い黄色の尿や白い便は認められないのです。

入戸野 博