新生児から乳児期に気になる症状について

心配ない嘔吐と心配な嘔吐

3.母乳やミルクを吐く赤ちゃん中には重症な病気のことがあるので注意しましょう。

母乳やミルクを一度に多く与えてゲップを十分に出さずに寝かせると空気が胃に多量に残っていて、吐くことは良くあることで心配はいりません。嘔吐が頻回でなく、機嫌が良くて哺乳量も十分で体重の増加が順調であれば様子を見ていてもよいと思います。体重増加が標準であることを確認することがポイントです。また、哺乳後にゲップをさせたて寝かせた後にダラダラと流れるように吐く場合も心配がありません。この場合には体重増加は順調なことが多いようです。

しかし、生後2~3週ころから「ドバっと噴水状の嘔吐」が哺乳ごとに見られ、体重増加が少ない場合には精密検査が必要です。幽門狭窄症という病気が考えられます。胃の出口である幽門の筋肉が肥大したために胃の内容物が流れにくくなり、逆ぜん動で噴水状の頻回の嘔吐が起きます。放置していると脱水となり、乳児はやせていきます。超音波検査で診断でき、内科治療に反応しない場合には手術入院で治ります。

鑑別診断は胃食道逆流症(GERD)であり、胃から食道へミルクが逆流しやすくなっているので哺乳後にゲップを励行し、その後も上半身を挙上した姿勢をとらせてみます。それでも改善しない場合には精密検査が必要でしょう。

いずれにしても、頻回の嘔吐がある場合には順調な体重増加を確認するために小児科を受診しましょう。もし体重増加が不良な場合には、精密検査が必要です。

他方、ウイルス性下痢症にかかっている最中などに、生後4か月ころ以降の乳児が突然嘔吐を繰り返して両足をちぢめて火のついたように泣き叫んでいるときには、腸重積症が考えられますので緊急で小児科を受診してください。時間が経過すると便に鮮血が混じって排泄されます。最初は周期的に泣き叫びますが、次第にぐったりと元気がなくなってきます。24時間以内に腸重積を整復しないと、時間がたって腸が腐るために緊急手術となってしまいます。

乳児で発熱と嘔吐が見られ、下痢は無いが頭のてっぺんの大泉門が腫れている場合には頭の中に細菌が入り髄膜炎を起こしている疑いがあります。機嫌が悪くてけいれんを起こすこともあります。これらの症状がある場合には入院して脊髄液を採取して検査します。髄膜炎は細菌性とウイルス性があり、細菌性の場合には後遺症が残ることもあり生命予後が悪いです。脱水症があると大泉門がそれほど膨隆しないこともあるので注意が必要です。現在では生後2か月になるとHibワクチンと肺炎球菌ワクチンの接種が行われているために化膿性髄膜炎の感染が著しく減少しています。大事なお子様を髄膜炎から守るために必ず予防接種は受けてください。

入戸野 博