新生児から乳児期の気になる症状について

哺乳量不足の問題?

4.体重増加不良と気づいたら

生後3か月までは1日当たり30-35gの体重増加があり、3㎏で出生した新生児は3か月時にはおよそ6kgとなっています。一般に母乳栄養児の体重増加は、人工栄養児よりも若干少ないようです。

母乳の出が悪い場合には、乳児の哺乳量が低下してカロリー不足となります。乳児が母乳をいくら吸啜しても、母乳の出が足りない場合には乳児はあきらめて途中で寝てしまいます。このような場合に多いのは、母乳を30分間も与え続けていることです。
3か月頃までに来院して母乳の与え方や、時にミルクの追加方法を指導できた場合には赤ちゃんの体重が順調に増加し、体重曲線にそって増加することが多いようです。
しかし離乳食を始めるころになると赤ちゃん自身が母乳不足になれてしまい、ミルクを追加しても飲まないことが多いようです。このような場合にはミルクにこだわらずに離乳食を進めてみましょう。

健康で元気な乳児で母乳の出が良好な場合には左右両方の母乳の投与時間が10分程度のこともあります。乳児の体重増加不良が気になる場合には小児科医に相談してください。低出生体重児でない場合には、母子手帳の体重曲線の範囲内に入ることが大切です。

5.乳児の哺乳困難、生まれつきの前歯(先天歯)による舌の潰瘍(リガ-フェデ病)

先天性歯には出生時に歯の萌出が認められる出生歯と生後1か月以内に萌出が認められる新生歯により、哺乳のたびに舌がこすれて潰瘍ができて母乳の哺乳障害がおこることがあります。治療は小児歯科で乳歯の一部を削ります。

6.舌小帯短縮症

舌小帯が短くて舌がクローバー状に引きつれて見える舌小帯短縮症があります。このためにうまく哺乳できずに発育不良になったり(哺乳障害)、将来うまくしゃべれなくなくなったり(構音障害、言語障害)することを心配する母親がいます。

しかし、一般的には舌小帯短縮症で体重増加不良や言葉がうまくしゃべれなくなった小児報告例は稀です。昔は短い舌小帯を新生児期に切断していましたが、現在では
よほどのことがないと切断しません。

その昔、舌小帯による言語障害に関する見解が日本耳鼻科学会から日本小児科学会誌に報告され、このような報告は国内外で無いとの結論でした。多くの場合には心配はいりませんが、程度がひどい場合には処置が必要かもしれません。

入戸野 博