第14回 若いヒトが新型コロナウイルスを子供や高齢者に感染拡大させている?

緊急事態宣言の解除後、ついに都内感染者数が7月に入って200名を超える日々が続いていた。このうち20~30歳代の若者が感染者の60~75%を占めており、さらに軽症者や無症状者の存在も指摘されていた。再流行で明らかになったコロナウイルスの感染に関するキーワードは、「新宿や池袋のような都市部の繁華街」、「夜が主であるが日中の飲食も」、「若者~中年者」、そして「小規模のライブハウス」などの3密状態の環境である。しかし、若者たちは自分たちは軽症で済むと思っているのか、それとも感染に対する意識の低下などが根底にあるのか不明であるが、若者が流行の中心となって感染の輪が次第に広がって小児へそして高齢者への感染が危惧されている状況だ。高齢者の死亡率は高率であることは明らかとなっており、再び重症者病床がひっ迫する可能性が出てきている。このため7月15日には東京都は警戒レベルを最高のレべル4へ引き上げた。

小児の感染率は世界的に見ても大人よりも低く、死亡者も報告されておらず、軽症に経過する。感染率の低さの理由の一つとして指摘されているのは、ウイルスが細胞に感染する際の入り口となるACE2(アンジオテンシン変換酵素2)というたんぱく質の量である。新型コロナウイルスは細胞の中に入り込む際にこのたんぱく質を足場として利用する。この足場が、小児では最も少なく、年齢が上がると増加しているという。

小児における感染の大部分は、家庭内感染が考えられるとのこと。日本小児科学会からは、「学校や保育施設の閉鎖は流行阻止効果に乏しい」と提言している。コロナ感染の拡大様式が明らかになってきている現在、小児や高齢者に接触する機会の多い職業(保育園、幼稚園、学校、介護施設そして医療施設など)にたずさわっている若い職員は、長期にわたるステイホームの維持だけではストレスがたまることは理解できるが、弱者への2次感染防止という職業意識を強く持ち、3密環境を当分のあいだ避ける努力が必要と考える。

入戸野 博