第6回:医療崩壊、世界から見た日本の対応について

医療崩壊について

新型コロナウイルス感染症はその8割が軽症であるが、中等症や重症になると長期間の入院療養が必要になる。ダイヤモンド・プリンセス号の感染患者は、いまだに50名以上が入院している。特に重症患者は重点病棟で治療しているために、ベッドが長期間空かない事情がある。軽症患者は2週間程度で退院できるが、20%程度の中等症以上の患者の入院が長期化する傾向がある。このため、感染症指定病院や協力病院のベッドの満床状態が解消されず、特に首都圏では入院患者の収容が困難な状況となっている。

このような背景と、医療従事者を守るマスクや防護服類の深刻な不足問題があり、スタッフの精神的、肉体的な疲労が問題となっている。重点病棟はもともと熟練を要する人員配置がされており、ECMO(人工心肺)などの高度な医療機器を用いている特殊な医療環境であるので、迅速な設備の拡充やスタッフの増員も容易では無いことは理解できる。

流行が大きくなると、物理的に専門病院に収容できない患者さんは一般の協力病院に収容してもらう。しかし、多くの病院では他の入院患者さんへの院内感染を恐れたり、防護服関係の物資が圧倒的に不足しているため、いわゆるたらい回しが社会問題となっている。医療提供者側からみると、突然の感染の拡大(オーバーシュート)には対応ができない(ベッドに限りがあり、中等症以上の感染者の迅速な入院に対応ができない)ので、緊急事態宣言の出口戦略には慎重にならざるを得ないのだ。死亡率の高い(10%以上)スウエーデンでは、高齢者の治療はあまり積極的には行わないとの情報を得た。国により医療に対する考え方が違うようだ。

世界から見た日本の対応について

先進国でさえも強い国家権力により流行を阻止、縮小しようとしており、日本の対応が注目されている。日本は強い国家権力での流行阻止を行っておらず、先進諸国の中で患者数が少ない状況である。対策が奏功している理由は、優秀な専門家の存在と国民の衛生意識に対するレベルが高いことだそうだ。

入戸野 博

目次:

⇒ 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関して、これまでに分かったこと
⇒ 第1回:COVID-19における潜伏期と臨床症状について
⇒ 第2回:院内感染問題、オンライン診療、電話再診について
⇒ 第3回:治療薬とワクチン開発について
⇒ 第4回:予後、重症化症例について
⇒ 第5回:予防対策、再流行について
⇒ 第6回:医療崩壊、世界から見た日本の対応について