第3回:治療薬とワクチン開発について

治療薬について

米国に続いて本邦でも、エボラ出血熱の治療薬であるレムデシビルという点滴注射薬が承認された。ウイルスの増殖を阻止する作用があり、重症患者に用いる薬剤である一方、肝臓や腎障害などの副作用があるために専門家による判断を要する。

他方、経口薬(錠剤)としては日本の製薬会社が新型インフルエンザ薬として開発したアビガンは現在治験が進行中であるが、妊婦には使用できない。アビガンも近い将来承認されて保険適応される予定である。

この他、関節リュウマチ薬や膵炎治療薬など、世界中では様々な薬剤の治験が実施されている。今後は多くの薬剤の効果が報告され、最も有効な治療薬の組み合わせや病状によるきめ細かな使用基準が報告されると考えられる。

ワクチンについて

COVID-19の流行は拡大と縮小を繰り返しながら数年間も続くことが予想されている。このため、うまくウイルスと共存することが求められているのだ。人口の70%程度の感染が起きれば感染の流行は終焉を迎えると考えられている。当初英国は流行を放置する方針をとっていたためにパンデミックになってしまい、首相まで感染して入院した。しかし途中で外出制限をするように変更された。

このウイルス感染症は特に高齢者が重症になる場合が多々あるので、どうしても感染予防対策を実施すべきである。流行を放置するわけにはいかないのだ。また、早急なワクチン開発が期待されている。世界各国の製薬会社が主導権争いでワクチン開発をしている。事実、WHOに登録されているワクチン開発の数が108種類もあるという。もちろん本邦の製薬会社も開発中であるし、経鼻式ワクチンも開発している。

ところで現実にワクチンが人々に接種されるのは、今後1-2年を要するのかもしれない。安全性の確認には時間がかかるのだ。しかし英国のオックスフォード大学で開発されているワクチンは、MERSの時の技術を応用しており、今年の9月に完成予定であるという。しかも、大切なその技術を世界中の製薬会社に提供するといっている。

また一般的に、インフルエンザワクチンの効果はおよそ50%程度であるが、果
たしてSARS-CoV-2のワクチンの場合にはどの程度の感染予防効果であろうか。いずれにしても精度の高い診断キットの開発、安全で効果的な薬剤の開発そして副作用の少ないワクチンの開発が今年中に実現すれば、一般診療所を含むすべての医療機関において現状よりも迅速に対処できるようになるし、来年のオリンピックの開催も現実のものとなる。

入戸野 博

目次:

⇒ 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関して、これまでに分かったこと
⇒ 第1回:COVID-19における潜伏期と臨床症状について
⇒ 第2回:院内感染問題、オンライン診療、電話再診について
⇒ 第3回:治療薬とワクチン開発について
⇒ 第4回:予後、重症化症例について
⇒ 第5回:予防対策、再流行について
⇒ 第6回:医療崩壊、世界から見た日本の対応について