第16回 肺炎球菌の予防接種について

65歳になると、肺炎球菌ワクチン(肺炎球菌23価ワクチン、ニューモバックス)接種のお知らせが届くと思います。高齢者の死因は悪性新生物、心疾患、脳血管疾患、老衰の順であり、肺炎は5番目です。肺炎による死亡例の約96%を高齢者が占めています。その肺炎の中でも肺炎球菌感染によるものが最も多く、現在では耐性菌が問題となっております。

しかし肺炎球菌による肺炎は、ワクチン接種で予防が可能です。65歳になったら是非接種することをお勧めいたします。1回目の接種料金に対する補助金は、各自治体で異なっておりますので、お近くの診療所にお尋ねください。副作用はほとんどありませんので安心してください。

肺炎球菌ワクチンは5年間追加接種をできませんが、1回目の接種から5年経過した場合に、すぐに追加接種をするかどうかは本邦では決まっていません。諸外国では定期的に摂取しているようですが。ヒトによって残っている抗体量が異なっており、再接種した場合の副反応に違いが出ることに対する危惧や、再接種した時の資料がないためのようです。私の経験では、5年後に再接種した数人の患者さんで何も副作用は認められませんでした。初回から10年くらい後に再接種をしても良いようですが、間隔に関してもデーターがないのが現状です。

他方、血小板減少性紫斑病の治療のために脾臓を摘出した患者さんでは、肺炎球菌23価多糖体ワクチン(PPSV23,ニューモバックス®)のみ脾摘患者に対しては保険適用されています。莢膜をもつ細菌(肺炎球菌、Haemophilus influenzae, など)は、主に脾臓で除去されます。このため、脾臓摘出術を受けた患者では、これらの細菌による脾臓摘出後重症感染症という急激に進行する感染症に進展することがあり、短時間で死亡します。ですから脾臓摘出後には、必ず肺炎球菌ワクチンを受けることが重要です。

脾臓摘出術の2週間前までにPCV13を接種し、その後は最低8週間を空けてPPSV23を接種します。通常の場合には、PCV13とPPSV23の接種は1年以上空けることになっていますが、脾臓摘出後などの免疫機能低下がある患者では少なくとも8週間で良いとされています。他方、65歳や70歳でPPSV23をすでに接種している場合は、1年空けてPCV13を接種するそうです。

入戸野 博