第17回 帯状疱疹(たいじょうほうしん)の予防接種について

子供の頃に水ぼうそう(水痘)にかかり、50歳以上になると帯状疱疹が出現することがあります。最初の症状は、皮膚がピリピリ、ズキズキ、チクチクとする痛みや焼けるような痛みを感じますが、皮膚の表面は何もなく、数日すると薄赤い発疹や水疱が神経に沿って出現します。

特徴は体の左右半分にしか出現しません。神経に沿って出ますので、両側には出ないのです。子供時代に感染した水痘ウイルスが、90%のヒトでは脊髄の神経節という場所に残っており、過労、ストレス、糖尿病、がんなどで免疫力が低下したときに出現すると考えられています。80歳までに3人に1人の割合で帯状疱疹が発症すると報告されています。

帯状疱疹には特効薬がありますが、問題は合併症の神経痛です。痛みは個人差があり、軽い人から重症な人までいます。特に痛みの激しい場合には帯状疱疹後神経痛(PHN : post herpetic neuralgia)という合併症が大問題となっています。高齢者ではこのPHNが2割程度存在します。この神経痛は後遺症として長期間持続することもあります。痛みが強い場合にはお風呂で温まると緩和されます。PHNに次いで多いのは10~15%に発症する眼部帯状疱疹に伴う症状として角膜炎、結膜炎、網膜炎、視神経炎および緑内障があります。慢性の眼部帯状疱疹は疼痛、顔面の瘢痕化および失明を引き起こすことが報告されています。また、重度な合併症としてラムゼーハント症候群があり、顔面神経の膝神経節で水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化することで発症します。

以上のような難治性の痛みやその他の重篤な合併症は経験したくないものです。ここ最近になって帯状疱疹予防ワクチン(シングリックス)が開発され、実用化されています。50歳以上で重い急性疾患にかかっていない健康な方に対して、2か月間隔で2回筋肉注射をします。ワクチン接種にて、細胞性及び液性免疫が増加します。主な副作用は注射した部位の痛み,赤み、腫れであり、注射部位以外の症状は筋肉痛、疲労、頭痛、悪寒、発熱などであり、多くは3日以内で改善します。

帯状疱疹ワクチンは自費ですので、1回の価格は22,500円、2回で45,000円と高価ですが、帯状疱疹の合併症を考えるとリーゾナブルナな価格でしょう。残念ながら帯状疱疹にかかった方は、がんが体のどこかに潜んでいるかもしれませんので、検査をお勧めします。

入戸野 博