第18回 睡眠時無呼吸症候群(SAS:sleeping apnea syndrome)

SASの自覚症状は、起床時の頭痛や熟睡感がなく、日中の会議中に眠くなったりすることです。また、集中力の低下や夜間排尿の増加などが認められることもあります。このため、SASによる交通事故も大きな問題として指摘されています。睡眠時のいびきと短時間の呼吸停止(無呼吸発作)により脳の休息が取れず、放置しておくと高血圧、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、心不全、および糖尿病などに進展することがあると報告されています。無呼吸発作の最中には、酸素飽和度(SpO2)の著しい低下や脈拍数の増加が認められます。睡眠中の無呼吸発作を記録する測定機器の測定値やグラフを目で見て確認すると、SASが身体に及ぼす影響の深刻さが容易に理解できます。

男性では肥満傾向のあるヒトに生じると思われがちですが、顎の形が小さい日本人では3割くらいのヒトは肥満がありません。女性ではあごが小さい人がなりやすいと言われています。

いびきをかく人で、家族から睡眠時の無呼吸発作の存在を指摘されているヒトは要注意です。特に10秒以上の無呼吸発作が1時間に5回以上ある場合は、SASの治療対象になる可能性があります。

最近では、診断のための簡易無呼吸発作測定器により睡眠時の無呼吸の有無や回数を記録でき、入院をしないで診断に利用できます。有料ですが自宅で装着できるため、SASの状態を解析するのが容易となっています。

もしSASの治療が必要な場合には、軽症な場合にはマウスピースを装着します。中等症以上では自宅の寝室での持続陽圧呼吸CPAP(continuous positive air pressure)装置を睡眠時に装着すると、閉塞した上気道を広げていびきや無呼吸の回数を改善します。この装置を使用すると、睡眠時の呼吸状態が正常に近づきます。CPAP治療は保険診療の適応となっていますので、症状のある人は一度医師に相談してください。CPAPの装着でも効果が得られない場合には、耳鼻咽喉科的手術もすることがあります。

また、小児ではCPAPが使用できない(自己除去)場合には、扁桃やアデノイドの手術をします。

下記に正常者と重症なSASの患者さんの5分間の検査データーを掲載します。重症なSASの患者さんは無呼吸発作が頻発しており、SpO2が著しく低下して脈拍数が増加しています。このような酸欠状態が寝ている間繰り返えされており、脳や心臓および全身への影響が大きいことが理解できると思います。

SASが心配の方は、医師にご相談ください。

入戸野 博