第11回 ポストコロナではなくウイズコロナでしょう

最近のわが国におけるCOVID19の動向をみると、北九州市で23日間も患者発生数がゼロであったのが5月24日から5日連続で計22人陽性と確認され、第2波が心配されている状況である。東京では5月25日に緊急事態宣言が解除されたが、相変わらず患者数は二けたを持続しており、6月2日には1日の陽性者が35人となり、警戒警報である「東京アラート」が出された。

このような状況から推測すると、以前から指摘されていたようにCOVID19を完全に制圧することは無理で、「ポストコロナ」の日本経済とかポストコロナの「医療体制」というマスコミの記事は現実的ではないと考えられる。やはり「ウイズコロナ」という表現の方が近未来に対しては正確だと思う。それは、緊急事態宣言が解除されたとしても、人々の心の中にはコロナ感染の恐怖が残っている。そして世界中の人々が治療薬剤とワクチンの早期の開発を待っており、これを契機に生活がコロナ以前に戻ることを待望している。しかし現実には治療薬のアビガンの承認も遅れている。ワクチンも世界中で専門機関が競争で開発しているが、RNAウイルスに対するワクチンはDNAウイルスに対するそれよりも困難であるらしい。RNAウイルス感染症であるC型肝炎ワクチンもなかなか開発されていないように。

コロナウイルスは流行が大きくなると遺伝子変異もそれに伴って頻度を増すようだ。毒性の増悪も心配である。また、現在のコロナウイルスの遺伝子変異は中国型、欧州型、米国型の大きく3種類に分類されているが、それぞれの型を用いたワクチンがお互いの株に対して効果を示すのかということも心配だ。それぞれのコロナウイルスの共通部分に対するワクチンなのか、それともインフルエンザワクチンのようにそれぞれの型に対するワクチンを混ぜて製剤にするのかもしれない。いずれにしても最も大事なのは安全性とその持続効果である。1日も早く開発されることを期待している。

入戸野 博