小児期、思春期

3.夜尿症

生命に直接かかわる疾患でないために、保護者や患児には「恥ずかしい」「隠したい」「恥」などの気持ちがあります。夜尿症とは、「5歳以降で、1か月に1回以上の夜尿が3か月以上続くもの」であり、さらに「1週間に4日以上の夜尿を頻回、3日以下の夜尿を非頻回」との定義があります。実際には小学校に入学し、集団のお泊り行事の時期が近づくと来院することが多いようです。頻度は就学直前の5~6歳では約20%、就学時は10%です。10歳以上では5%前後、中学生では1~3%です。まれに成人まで継続することもあります。

夜尿症の原因には、夜間多尿、排尿筋過活動、覚醒域値の上昇、発達の遅れ、遺伝的素因などが報告されています。夜尿は体質的な要因が大きいと思われるので、大多数の患児は加齢とともに改善をします。自然治癒の時期は女児で10~11歳、男児は12~14歳ころと報告されています。キャンプなどの課外授業時に心配する保護者が多いのも事実です。

治療は、泌尿器科的疾患、尿崩症、睡眠時無呼吸症候群などの基礎疾患の除外を行い、水分摂取制限などの生活習慣の説明と排尿日誌の記入の指導が必要です。また、中等症以上では薬物療法(漢方薬を含む)や夜尿アラームなどの使用を選択します。

これらの治療に抵抗性の場合には、超音波検査による解剖学的尿路異常の検索、膀胱容量、膀胱壁厚、残尿などの検査を行います。まれですが夜尿症のほかに、5歳以上で器質的な疾患がないにもかかわらず、トイレ以外で排尿してしまうことを遺尿症といいます。尿崩症、尿路奇形、二分脊椎による膀胱直腸障害などの精密検査が必要です。また、便の場合には遺糞症と言い、同じく精査が必要です。