屋外活動が近視進行抑制に重要であることはこれまで世界各国で発表された多くの研究から明らかになっています。
すなわち、屋外で過ごす時間が長い小児は近視になりにくいということです。
過去のある論文では、6歳前後に屋外で過ごした時間の長さが近視発症予防に重要である可能性が示唆されており、また12歳児を研究対象とした別の論文では、屋外活動が少なく近方作業時間が長い小児は、近方作業時間が少なく屋外活動時間が長い対照群より有意に近視を発症しやすい、とされています。
なぜ屋外活動が近視進行抑制に関与するのか?太陽光に含まれるバイオレットライトが網膜内の近視進行抑制因子をもつ遺伝子の発現を亢進させる、という「バイオレット仮説」に基づいた研究などが進んでいますが、未だはっきりとは解明されていません。
今回の学会の「近視研究」のセッションにおいて、都内某私立中学校の生徒の近視度数を実際に測定し(非近視群、近視群、強度近視群の三群に分類)、かつアンケート調査により得られた過去の屋外活動時間(未就学時、小学校低学年時、小学校中学年時、小学校高学年時)との関連性を検討した研究結果が発表されていました。
結果は、「小学校高学年児の屋外活動時間に三群間(非近視群、近視群、強度近視群)で有意差を認めた」とのことです。このことから、中学生における近視の度数は、小学校高学年時における屋外活動時間と関連性がある可能性が示唆された、と結論づけられています。
分かりやすく言うと、小学校中学年時以下の屋外活動時間の差と中学生になってからの近視度数との関連性は証明できなかった(有意差はなかった)一方で、小学校高学年時の屋外活動時間に差があると、それがそのまま中学生になってからの近視度数に関連付けられる(有意差があった)・・・この時期の屋外活動時間が少なければ少ないほど近視度数が強くなりやすい、ということです。つまり屋外活動が近視進行抑制に重要なのは大前提であり、そのなかでも小学校高学年時の屋外活動時間がその後の近視進行を最も左右する可能性があるのです。
近視の進行をできるだけ防ぐためには、小学校低学年時・中学年時だけでなく、小学校高学年(5年生・6年生)になっても引き続き外で遊ぶ時間を設けたほうが良いのですね。中学年時までは外で遊ぶ習慣があっても、高学年になって止めてしまっては中学生になってから近視がどんどん進行してしまう可能性があるわけです。
・・・しかしながら現実には、中学受験に臨む生徒は、小学校5年生頃から猛烈な受験勉強が始まるために塾通いなどで屋外活動時間が減少してしまうのはやむを得ないでしょう。一定の屋外活動時間がどうしても得られない受験生(に限らず、あまり外で遊ぶ習慣がない小学生)に対しては、点眼やワックなどの近視進行抑制のためのアプローチ法が積極的に導入されるべきであると考えます。