前回投稿と同様、第124回日本眼科学会総会においてWEB上で発表された演題の要約です。
幼少時における近方作業時間の増加は近視や内斜視の危険因子とされている。そこで、厚生労働省より調査対象の家庭に送付された調査票の返信内容をもとに、テレビ視聴及びその時間と小学生になってからの視力低下の関連性を分析した。
結果は、1.5歳・2.5歳の時にテレビ(ビデオ)視聴が主な遊びであった子供は、そうでない子供と比べると、その後の小学生になってから視力が悪くなった率が有意に高かった。
また、2.5歳時に1日のテレビ視聴時間が長い子供(2時間以上)は、視聴時間が短い子供(1時間未満)と比べると、その後の小学生になってから視力が悪くなった率が有意に高かった。
3.5歳・4.5歳・5.5歳時の1日のテレビ視聴時間と小学生時の視力が悪くなったこととは関連性がなかった。
結論として、1.5歳時及び2.5歳時のテレビ視聴とその後の小学生になってからの視力が悪くなったこととの関連が見られた。
・・・とのことです。
「生後の早い時期にテレビ視聴時間が長くならないように注意を喚起する必要がある」と発表では締められていました。
「近方作業」が近視を発症させる「環境因子」の大きな要因であることは間違いありません。それでは、近方作業の何が問題なのでしょうか?それは「時間」と「距離」だと思われます。つまり、近方作業をする時間が長ければ長いほど(続けるほど)近視になりやすく、見る物と目の距離が近ければ近いほど近視になりやすいのです。(理由は当ブログで後日紹介します。)
ですから、近視による視力低下でクリニックを受診された児童の方と保護者には、「勉強でもゲームでも、近くを見る時は時間が長く続かないように、適宜休憩を挟んで眼を休めましょう」「見る物と目の距離が近くなり過ぎないように30センチ以上距離を取りましょう」とアドバイスさせていただいています。
近代社会において、近方作業を一切行わずに生活していくのは至難の業です。そもそも、学生の本分である座学による勉強こそが近方作業の最たるものです。中学生になったらほとんどの学生が携帯・スマホを所持するでしょうし、小学校でもタブレット型電子機器を用いて授業を行っているところもあります。いまや就学前の幼稚園児を対象としたタブレット型の学習機器もあるほどです。つまり、現代を生きる子供達は近方作業とは最早どうやっても離れられないのです。では、近視を予防するためにはどうすれば良いのか?近方作業を営みながら、近視進行抑制のアプローチに取り組むしかありません。
前回は「屋外活動」について、今回は「近方作業環境の改善」について、近視進行抑制の観点から実際に発表された演題と絡めながら紹介しました。次回は「栄養成分(サプリメント)」について紹介します。