御閲覧有難うございました

私のインタビュー記事が週刊新潮に掲載されてから1ヶ月が経ちました。

各方面から多大なる反響が寄せられました。

事前に告知していた親しい友人はもちろんですが、もう何年も連絡を取っていなかった大学の同級生や部活の先輩、さらには告知していなかった大学の恩師の教授などが、記事を見たよ!とわざわざ連絡をくださいました。

大学の教授は、「毎週木曜日に見出し広告を見て新潮か文春のどちらかを買って読んでいるが、6月3日は新潮を選んで読み進めていたら何かどこかで見たことある顔だな、と思ったら君だったよ」と笑いながらおっしゃっていました。深い縁によって新潮を選ぶように導かれた、ということかもしれません。こんなこともあるのですね。

同級生からは、「次は文春か?文春砲で登場しないように気を付けろ」とアドバイスをもらいました。言われたとおりに真摯に生きていきたいとは思いますが、文春砲の餌食になるぐらい著名にもなってみたい、と少しだけ思います。

その他、すでに当院に近視に対するアプローチで通院されているお子様の保護者の方からも感想を寄せられましたし、あるいは「新潮の記事を見てオルソケラトロジーをこちら(当院)で導入したいと思って来ました」という新規患者の方も複数いらっしゃいました。かなり遠方から親子でいらっしゃったご家族の方もいて嬉しい限りです。

拙ブログのアクセス数も、記事が出てからアクセス数が急増いたしました。興味を持ってくれた読者の皆様がたくさん訪問してくださっているものと思います。

皆様の期待に応えるべく、近視を含めた眼科分野に関するトピックスについて、今後も不定期に更新してまいります。

週刊新潮に掲載されました

本日6月3日発売の週刊新潮(6月10日号)に、私の紹介記事が掲載されました!

「良医の視点(vol.39)」というコーナーで、オルソケラトロジーの特集記事に堂々たる見開き2ページ!で登場しております。

「小児の近視進行を抑制するためのアプローチ法のひとつにオルソケラトロジーがあるので、どんどん目が悪くなってしまっている小児とその保護者の方は、近視を矯正するための選択肢として、『そういうのがあるんだなぁ』、程度でいいですから頭の片隅に留めておいてください」という趣旨の記事となっております。

記事を出したからといって、近視の小児の方には何としても!絶対に!!オルソケラトロジーを強くおすすめします!!!成人の方もどうぞ!!!!というオルソケラトロジーごり押しの主張では決してございません。

掲載された他の先生方の特集記事も拝読しましたが、自分同様、いずれもオルソケラトロジーの小児に対する有効性に焦点を当てた内容となっていました。日中に眼鏡もコンタクトレンズも不要になる、というメリットは魅力的ですが、それ以上にやはり小児において近視進行抑制効果が得られるということがオルソケラトロジーの最大の魅力、利点であると私は思っております。もちろんこれは私個人の感想ですが、同様の考えを持たれた先生方が他にも多数いらっしゃるということが確認できたのは素晴らしいことでした。

お子さん、もしくはお孫さんが近視で見えにくくなっているという週刊新潮読者で、記事を読んでオルソケラトロジーに興味を持たれ、治療してみたい、もしくは話だけでも直接聞いてみたい、という方がいらっしゃいましたら、どうぞ遠慮なくお問い合わせください。

拙ブログをご覧の方のほとんどは週刊新潮の記事を読んでからアクセスしてくださった方だと思われますが、まだ記事を読まれていない方は、是非とも週刊新潮6月10日号(440円)をご購読のうえ特集記事をご覧ください。私は家庭内閲覧用と院内閲覧用と永久保存版用(家宝にします)で3冊買いました。

WEB版も本日から公開されています。こちらからご覧ください。

今回の特集記事が週刊新潮読者とそのご家族の皆様の健康増進に少しでも貢献できれば幸いです。

緊急事態宣言

政府は1月7日、1都3県に対して2回目の新型コロナウイルス感染症対策のための緊急事態宣言を出しました。

前回と違うところはいくつかありますが、そのなかでも私個人がホッとしたのが学校に対する臨時休校が要請されなかったことです。

(↑NHKの新型コロナウイルス特設サイトより)

日本小児科学会は、11月11日付で「小児の新型コロナウイルス感染症2019(COVID-19)に関する医学的知見の現状」というタイトルで学会としての見解をHPに公開しています。そのなかで次のように考察されています。

「学校や保育施設の閉鎖は流行阻止効果に乏しい」

「教育・保育・療育・医療福祉施設等の閉鎖が子どもの心身に影響を及ぼしている」

指摘されているとおりであると私も思います。

僭越ながら、眼科医として上記の補足をさせていただくならば、悪影響は視機能にも大きく及んでいる!!

去年1年間の臨床の現場で、臨時休校期間明けに久々に受診したらガクンと視力が低下していたという学童の症例を数多く経験しました。生活習慣を詳しく聞き取ってみると、休校で自宅で過ごす時間が長く、また外に遊びに行かずに(行けずに)、ゲームに熱中したりタブレットを視聴している時間がとても長くなっていた、という方がほとんどでした。

臨時休校と外出自粛のセットは視力にとっては最悪の組み合わせです。1日2時間以上の屋外活動が近視進行の抑制につながることが示唆されており、過度におそれて外出を自粛して引きこもりがちになってしまうことは近視進行の観点からみても好ましくありません。さらに自宅内でゲームやタブレットばかり見て一日の大半を過ごすとなると・・・もはや近視になれ、と言っているようなものです。

今回、臨時休校が要請されなかったことに関しては、文部科学省の判断は素晴らしいと評価したいです。そして、子供たちには放課後も外で大いに元気よく遊びまわってもらいたいです。過度な自粛を子供たちにまで強要しようとする愚民がもしいたら、上記の日本小児科学会の見解を100回読み返すことをおすすめします。

オルソケラトロジー

オルソケラトロジーレンズは近視矯正のために開発された特殊な形状のハードコンタクトレンズです。通常のコンタクトレンズはソフトレンズでもハードレンズでも朝起床してから装着して夜就寝前に外すものですが、オルソケラトロジーレンズは就寝前に付けて、装着したまま睡眠を取り、起床後に外す、という使用法です。そのため、ナイトレンズと呼ばれることもあります。

オルソケラトロジーレンズを一定時間装用すると、角膜(くろめ)をわずかに扁平化(平らに)させることが出来ます。角膜の形状の微妙な変化によって屈折が変わり、近視矯正効果が得られます。それまで眼鏡やコンタクトレンズを必要とした方でも、オルソケラトロジーレンズを用いれば日中裸眼で快適に見ることが出来るようになります。そのため、球技などのスポーツに取り組んでいる方や、眼が乾きやすい方や花粉症などのアレルギーで悩んでいる方にはおすすめといえるでしょう。

日本眼科学会のガイドラインでは適応は-4.00Dまでの近視度数となっており、-4.00Dを超える近視の場合は、完全矯正効果が得られない可能性があります。つまり、近視の方の全てに適応があるわけではない、ということが注意点です。

また、同ガイドラインには、年齢は原則として20歳以上であり、20歳未満には慎重処方、となっています。当初は、LASIKと同じく20歳以上のみが適応となっていましたが、研究の結果オルソケラトロジーには近視進行抑制効果があるということが分かり、であるならば近視が進行する小児・学童にこそ適応すべきではないのか、との考えが広まった結果、未成年にも門戸が開かれるようになった、という背景があります。

私個人の意見ですが、オルソケラトロジーの最大の魅力はやはり近視進行抑制効果が得られることであると考えます。これは眼鏡や普通の単焦点コンタクトレンズにはない特徴です。同じ近視矯正をするのであれば、日中裸眼で過ごせるようになり、かつ近視進行抑制効果も得られるオルソケラトロジーレンズをぜひ使ってみたいと思いませんか?

順伸クリニック眼科では、オルソケラトロジーを今年の8月から導入いたしました。興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。当院での料金体系は以下のとおりです。

①適応検査代金 5000円

レンズデータを決定するために必要な検査一式を行います。

②トライアル代金 25000円(片眼の場合は12500円)

1週間トライアルレンズを貸し出しして、ご自宅で毎晩装用していただき近視矯正効果を確認します。

③レンズ代金 100000円(片眼の場合は50000円)

トライアルの結果にご満足であれば、レンズを購入いただけます。

レンズ購入を見送られる場合、トライアル代金の25000円は返還いたします。

以上、レンズを購入する場合にかかる総費用は130000円となっております。

これには最初の1年間の定期検査代、最初の1年間のレンズ紛失・破損時の補償も含まれています。

近視進行抑制に有効な低濃度アトロピン点眼液

順伸クリニック眼科では、近視進行抑制に効果があるとされる低濃度アトロピン点眼液を取り扱っております。

シンガポールで開発された「マイオピン点眼液」は、日本でも手術の前処置薬や抗炎症薬として処方されている「1%アトロピン点眼液」を100倍に希釈した点眼液です。

(マイオピン点眼液=0.01%アトロピン点眼液)

上記グラフは、シンガポールにおける無作為臨床比較試験の簡易結果です。

(2006年のATOM1studyと2012年のATOM2study)

2年間でプラセボ群が-1.20D進行したのに対し、0.01%アトロピン群では-0.49Dの進行に留まりました。

つまり、(1.20-0.49)/1.20≒0.59 ですから、

2年間で近視の進行を約60%抑制した

ということになります。

(2019年に香港で報告された研究(LAMPstudy)では最初の1年間で27%抑制したとというデータもありますが、研究対象の基準に若干の違いがあるようです)

近視進行の病態生理は眼軸長が伸展することにありますが、マイオピン点眼液は眼軸長の伸展を有意に抑制することも明らかになっています。日本で行われた多施設同時研究(2019年のATOM-J)では眼軸長の伸展を18%抑制した、との結果が出ています。これは、調節緊張症(仮性近視)の治療で用いられるミドリン®M点眼液やミオピン®点眼液(いずれも参天製薬製造)には無い特徴であり、マイオピン点眼液がより優れている点といえます。

日本ではマイオピン点眼液は未だ認可に至っていないため、残念ながら保険診療外となっております。現在進行形で低濃度アトロピン点眼液の治験が国内で行われており、近未来に承認され薬価収載されれば保険診療で処方できるようになりますが、現時点では自由診療での取り扱いとなります。

近視がどんどん進行して困っているお子様とその保護者の方、近視進行抑制に興味がある方は、お気軽に順伸クリニック眼科を受診されてください。

登校が再開するお子様をもつ保護者の方へ

緊急事態宣言の解除を受け、学校の臨時休校期間が終わりました。

順伸クリニックの近隣地域の横浜市青葉区、あるいは川崎市麻生区でも週明けの6月1日月曜日から段階的に登校が開始される運びとなっています。

さて、学校においては、毎学年定期的に生徒の健康診断を行わなければならない、と学校保健安全法で義務づけられています。健康診断のなかには視力検査も含まれます。例年は進級した直後の4~5月に行われていたところでしたが、今年度に関しては登校させる生徒を段階的に増やしていくことなどを考えると、視力検査を含めた健康診断が実施されるのは9月以降になるのではないか?と思われます。(実際、私が校医を務めている都内の学校からは眼科健診は10月でお願いします、という依頼が先日届いたところです。)

ここで問題提起したいのは、臨時休校期間の間に近視を発症して視力が低下してしまっている生徒がかなり多いのではないか?ということです。

臨時休校の間は、不要不急の外出は自粛するよう努めていた方がほとんどで、当然ながら家にいる時間が増えます。室内では、自ずと近くを見る時間が長くなっていたと推察されます。オンラインで授業を受けていた生徒もいれば、youtubeで動画視聴に没頭してしまった生徒、あるいはゲームに夢中になってしまった生徒もいたことでしょう。いずれにせよ、PC・タブレット・スマホを視聴していた時間はこれまでよりも増えたのではないでしょうか?近方作業時間が長くなると、ピントを合わせる際に働く眼の中の毛様体筋という筋肉を著しく酷使します。毛様体筋が勤続疲労を起こすと過緊張を起こしてしまい、近方にピントが合ったままの状態になってしまいます。

これが「仮性近視」といって近視のはじまりの段階であり、視力低下の原因となります。

「仮性近視」は早めに治療を施してあげる・・・すなわち毛様体筋の緊張を緩和させてあげることで、ピント調節機能が回復すればいったん低下してしまった視力は回復します。

しかし、「仮性近視」の状態が漫然と続いてしまうと、本物の近視(=真性近視)となってしまい、回復は望めない状態になってしまいます。

つまり、視力低下が始まったら、治療が早ければ早いほど視力を回復できる可能性が高まりますが、治療が遅れれば遅れるほど回復が難しくなってくるのです。

このブログ記事を読んでくださっている皆様のお子様は大丈夫でしょうか?臨時休業中に目を酷使していませんでしたか?もしかしたら、視力低下(仮性近視)が始まっているかもしれません。しかし、いつになるか分からない学校の視力健診を待っていては、視力が回復するかもしれないチャンスを逸してしまうことになり得ます。

学校が始まったら、黒板の字が見えにくくなってないかお子様に訊ねてみてください。しかし、視力低下は急激ではなく徐々に進行するため、近視の初期は本人も見えにくいことに気づいていないこともあります。他人から見て分かりやすい近視発症のサインは、テレビを見る際に目を細めて見ている仕草です。お子様の視力が低下していないか気になった保護者の方は、学校の視力健診を待たずして順伸クリニック眼科で検査を受けることをお勧めいたします。当院では仮性近視治療による視力回復アプローチ、ならびに近視進行抑制に対するアプローチを行っております。

少しでも多くの学童の方の近視が早期発見され、早期治療によって視力が回復できることを願っています。順伸クリニックでは出来る限りのサポートをさせていただきます。

近視に関する新たな遺伝子を発見

横浜市立大学眼科の研究グループが、強度近視を対象とした遺伝子解析研究を行い、近視の発症・進行に関与する新たな遺伝子を同定した、と発表されました。

研究成果の論文が、眼科の主要国際雑誌「Ophthalmology」に掲載されています。

同定できた9種類の遺伝子のうち、3種類は過去の研究から既に有力とされていた遺伝子であり、6種類が新たに同定された遺伝子である、とのことです。

詳しくはこちら↓↓

https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2020/202005meguro_OPHTHA.html

今回の研究が近視の病態解明への手がかりとなることが期待されます。

そして近未来、近視発症ならびに進行抑制の方法が確立されることを望みます。

チョイス@病気になったとき

本日、NHKEテレ内の「チョイス@病気になったとき」という番組で、「知っておきたい 近視のリスク」というテーマで近視が取り扱われました。ゲストとして東京医科歯科大学医学部眼科学講座教授の大野京子先生が出演・解説されました。大野先生は日本における近視研究の第一人者であり、私も学会やセミナーで数多く講演を拝聴させていただいている方です。本日のブログでは番組の内容をこちらで補足したうえで簡潔にまとめます。

・日本人の近視有病率が年々増えてきている。遺伝子だけでは近視の増加は説明できない。スマホやゲームなどの環境要因が大きく関わっていると思われる。

・近視には「ジオプトリ―」という単位がある(「D」と簡略化される)。-6Dを超えたものは「強度近視」に分類される。自分の近視の度数を大まかに知りたければ、片方の眼を隠した状態で顔の前に人差し指をかざし、裸眼の状態で指を遠くから目に近づける。人差し指の指紋がはっきり見えたところで指と顔の距離を測定し、16センチ(1万円札程度の大きさ)より短ければ近視度数は-6D以上と概算される。

・強度近視になると様々な病気のリスクとなる。代表が「緑内障」「網膜剥離」「脈絡膜新生血管」である。これらの病気はいずれも治療が遅れたりすれば最悪失明かそれに近い状態になってしまうおそれがある。

・これらの病気を発症するリスクを少しでも下げるために、近視の進行を抑制する取り組みが注目されてきている。近くを見る時間を出来るだけ減らしたり、1日2時間以上の屋外活動を営むことが有効とされる。

・近視が強く「脈絡膜新生血管」を発症してしまった患者を紹介。網膜の下の脈絡膜という層から、本来ないはずの血管が網膜内に進展してしまい(新生血管)、それが網膜内で出血を起こし、網膜の中心部の黄斑が浮腫を起こしてみえにくくなった。視野の中心部が波打って歪んで見えていた。抗VEGF薬という治療薬を眼球に直接注射することで新生血管を消退させ、黄斑の浮腫を改善させることができた。半数の人は1回の抗VEGF薬の注射治療で改善する。1回の注射にかかる費用は3割負担で4~5万円。

・近視があると発症しやすい疾患として先述した以外に「白内障」があげられる。ほとんどの白内障は加齢によって生じるものであるが、40~50歳代で近視に伴って生じる近視性の白内障がある。実際の患者を紹介。見え方に影響が出始めた初期の頃は眼の手術が怖かったため様子を見ていたが、白内障が進行してしまい車の運転にも支障をきたしてきたため思い切って手術を決断。手術は20分程度であっという間に終わり安全だった。術後の見え方はとても快適で、もっと早く手術を受けていれば良かった、と振り返った。

・最新の白内障手術として「多焦点レンズ」を入れる手法がある。濁った水晶体を取り除いて度数の入った人工の眼内レンズに置き換えるのが白内障の術式だが、従来のレンズは「単焦点レンズ」、つまりピントが合う位置が1点のみであった。対する「多焦点レンズ」は文字通りピントが合う位置が1点のみではないため、遠方も中間距離も近方もそれなりに見える、という利点がある。一方で、適応が限られたり、保険診療外なので治療費がかかる、という欠点もある。

・さらなる近視治療手術として、近視矯正用の眼内レンズを眼内に挿入する「ICL」という術式がある。元々備わっている水晶体を操作することなく、水晶体の手前のスペースに眼内レンズを固定する手術である。やはり保険診療外であり、両眼に手術すれば100万円ほどかかる。

・近視に関連する疾患として「コンタクトレンズにまつわるトラブル」がある。毎日のコンタクトレンズの洗浄をいい加減に済ませていると感染症を起こしやすい。そのなかでも難治性で厄介なのがアカントアメーバの感染であり、近年コンタクトユーザーによる症例が増加している。アメーバは原虫に属するので抗菌剤は効果がなく、抗真菌剤や消毒薬などの特殊な薬剤による治療が必要である。最悪の場合は改善せず角膜移植が必要になることもある。実際の患者を紹介。ある日から急に視界がぼやけ、近医眼科で点眼を処方され使用していたが改善せず、大学病院でアカントアメーバ感染症と診断され4日間入院。毎日角膜を直接削ることによってアメーバを除去して改善した。

・コンタクトレンズの管理は充分過ぎるくらい入念にやることが大切である。コンタクトレンズは高度管理医療機器であり、医師が診察したうえで処方されるべきものである。定期的な診察は必ず受けることが大切である。期限が切れた使い捨てコンタクトをいつまでも使ったりしてはいけない。また装着したまま寝てしまうことが決してないように。

 

・・・以上です。近視に関わる諸問題を45分間でコンパクトにまとめた番組内容で、視聴者にも分かりやすく伝わったものと思います。

NHKの番組HPから見逃し配信が見られます。(登録が必要)

また再放送が5月15日(金)午後0時~(正午)NHKEテレで見られます。

近視進行抑制効果が期待される天然成分「クロセチン」

本日紹介する内容は、第124回日本眼科学会総会内で主催予定だったロート製薬共催のランチョンセミナー「近視進行抑制研究の最前線」の内容の要旨です。ランチョンセミナーに参加するとついてくる弁当は当然もらえませんが、WEB配信で閲覧できただけでも収穫の内容でした。

近視進行抑制因子として、網膜内に存在するEGR1遺伝子の存在が注目されている。先日紹介した「バイオレット・ライト」の実験で用いたヒヨコの網膜を調べたところ、バイオレット・ライトを照射したことでEGR1遺伝子の発現が亢進されていたことが明らかとなった。すなわち、バイオレット・ライトによる近視進行抑制のメカニズムのひとつとしてEGR1遺伝子が関与していると考えられた。

そこで、EGR1をバイオレット・ライト以外の方法・・・食品成分として体内に取り入れることで近視進行抑制効果を示すことはできないか?と考えた。合計207種類もの食物由来天然成分、化合物をスクリーニングしたところ、サフランやクチナシに多く含まれる「クロセチン」という成分が非常に強いEGR1活性化作用を持つことが明らかとなった。このクロセチンを実験用マウスへ投与したところ、屈折の近視化だけでなく、眼軸長の伸展、脈絡厚の菲薄化(いずれも近視化の要素)も抑制されていたことが確認された。クロセチンの濃度を変えて検証したところ、マウスであれば0.001%より濃い濃度であれば有効な近視進行抑制効果が見られたことから、これを計算式を用いて人間(10歳前後の小児)の必要量に換算すると7.5mg/dayとなった。

・・・以上の研究内容を踏まえて、近視進行抑制のための栄養補助食品(サプリメント)として、慶應義塾大学医学部眼科学教室の近視研究チームがロート製薬と共同開発した製品が「ロートクリアビジョンジュニアEX」です。

先述したとおり、1日の必要量である7.5mgのクロセチンが配合されています。

今回のセミナーで学習したのですが、クロセチンには近視進行抑制効果の他にも、抗酸化作用・血流改善作用・眼精疲労を軽減する効果・睡眠障害を改善する効果・抗炎症作用・神経保護作用、etc・・・があることが過去の論文で報告されていました。

順伸クリニック眼科では、ロートクリアビジョンジュニアEXを購入することができます。飲み込む小さなカプセルタイプなので、カプセルが飲めない小さなお子様には、噛んで食べられるおやつタイプの姉妹品もあります。あわせて当院で販売しております。(最初に出たのがおやつタイプの「ロートクリアビジョンジュニア」で、より近視進行抑制作用に特化した製品として”EX”が後から販売されました。)

近視進行抑制に取り組みたいお子様と保護者の方は、どうぞお気軽に当院でお買い求めください。ホームページのサプリメントのコーナーでも紹介しています。

幼少時のテレビ視聴と学童期の視力低下の関連性

前回投稿と同様、第124回日本眼科学会総会においてWEB上で発表された演題の要約です。

幼少時における近方作業時間の増加は近視や内斜視の危険因子とされている。そこで、厚生労働省より調査対象の家庭に送付された調査票の返信内容をもとに、テレビ視聴及びその時間と小学生になってからの視力低下の関連性を分析した。

結果は、1.5歳・2.5歳の時にテレビ(ビデオ)視聴が主な遊びであった子供は、そうでない子供と比べると、その後の小学生になってから視力が悪くなった率が有意に高かった。

また、2.5歳時に1日のテレビ視聴時間が長い子供(2時間以上)は、視聴時間が短い子供(1時間未満)と比べると、その後の小学生になってから視力が悪くなった率が有意に高かった。

3.5歳・4.5歳・5.5歳時の1日のテレビ視聴時間と小学生時の視力が悪くなったこととは関連性がなかった。

結論として、1.5歳時及び2.5歳時のテレビ視聴とその後の小学生になってからの視力が悪くなったこととの関連が見られた。

・・・とのことです。

「生後の早い時期にテレビ視聴時間が長くならないように注意を喚起する必要がある」と発表では締められていました。

「近方作業」が近視を発症させる「環境因子」の大きな要因であることは間違いありません。それでは、近方作業の何が問題なのでしょうか?それは「時間」と「距離」だと思われます。つまり、近方作業をする時間が長ければ長いほど(続けるほど)近視になりやすく、見る物と目の距離が近ければ近いほど近視になりやすいのです。(理由は当ブログで後日紹介します。)

ですから、近視による視力低下でクリニックを受診された児童の方と保護者には、「勉強でもゲームでも、近くを見る時は時間が長く続かないように、適宜休憩を挟んで眼を休めましょう」「見る物と目の距離が近くなり過ぎないように30センチ以上距離を取りましょう」とアドバイスさせていただいています。

近代社会において、近方作業を一切行わずに生活していくのは至難の業です。そもそも、学生の本分である座学による勉強こそが近方作業の最たるものです。中学生になったらほとんどの学生が携帯・スマホを所持するでしょうし、小学校でもタブレット型電子機器を用いて授業を行っているところもあります。いまや就学前の幼稚園児を対象としたタブレット型の学習機器もあるほどです。つまり、現代を生きる子供達は近方作業とは最早どうやっても離れられないのです。では、近視を予防するためにはどうすれば良いのか?近方作業を営みながら、近視進行抑制のアプローチに取り組むしかありません。

前回は「屋外活動」について、今回は「近方作業環境の改善」について、近視進行抑制の観点から実際に発表された演題と絡めながら紹介しました。次回は「栄養成分(サプリメント)」について紹介します。