オンライン疲れ

5月31日付の当ブログ記事で臨時休校期間の生徒の近視化を危惧する内容の記事をアップしましたが、本日のNHKニュースで「子どもの目の『オンライン疲れ』」という題目が取り上げられました。

放送された内容がWEB記事にもなっていますので下記をご覧ください。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200620/k10012478421000.html

記事内で東京福祉大学の教授がおっしゃっている「ずっと画面を見続けるような状況を作らないように、適度に休憩を取ることが大切だ」という提言は、やはり5月6日付の当ブログ記事で学会の演題内容と絡める形で紹介しております。

改めてこのブログを通じて読者の皆様に申し上げます。

臨時休校を余儀なくされたお子様がいらっしゃる保護者の皆様は、お子様の視力が下がっていないかを心配してください!

順伸クリニック周辺の小・中学校では、視力健診がすでに行われたところもあり、早速引っかかって要受診の用紙を持参してクリニックにいらっしゃるお子様が増えてきています。まだ健診が行われていない学校の方も、健診を待たずに早めに眼科で視力検査を受けられることをおすすめします。近視が発症していた場合、早期発見して早期治療することで視力は回復する可能性があります。

登校が再開するお子様をもつ保護者の方へ

緊急事態宣言の解除を受け、学校の臨時休校期間が終わりました。

順伸クリニックの近隣地域の横浜市青葉区、あるいは川崎市麻生区でも週明けの6月1日月曜日から段階的に登校が開始される運びとなっています。

さて、学校においては、毎学年定期的に生徒の健康診断を行わなければならない、と学校保健安全法で義務づけられています。健康診断のなかには視力検査も含まれます。例年は進級した直後の4~5月に行われていたところでしたが、今年度に関しては登校させる生徒を段階的に増やしていくことなどを考えると、視力検査を含めた健康診断が実施されるのは9月以降になるのではないか?と思われます。(実際、私が校医を務めている都内の学校からは眼科健診は10月でお願いします、という依頼が先日届いたところです。)

ここで問題提起したいのは、臨時休校期間の間に近視を発症して視力が低下してしまっている生徒がかなり多いのではないか?ということです。

臨時休校の間は、不要不急の外出は自粛するよう努めていた方がほとんどで、当然ながら家にいる時間が増えます。室内では、自ずと近くを見る時間が長くなっていたと推察されます。オンラインで授業を受けていた生徒もいれば、youtubeで動画視聴に没頭してしまった生徒、あるいはゲームに夢中になってしまった生徒もいたことでしょう。いずれにせよ、PC・タブレット・スマホを視聴していた時間はこれまでよりも増えたのではないでしょうか?近方作業時間が長くなると、ピントを合わせる際に働く眼の中の毛様体筋という筋肉を著しく酷使します。毛様体筋が勤続疲労を起こすと過緊張を起こしてしまい、近方にピントが合ったままの状態になってしまいます。

これが「仮性近視」といって近視のはじまりの段階であり、視力低下の原因となります。

「仮性近視」は早めに治療を施してあげる・・・すなわち毛様体筋の緊張を緩和させてあげることで、ピント調節機能が回復すればいったん低下してしまった視力は回復します。

しかし、「仮性近視」の状態が漫然と続いてしまうと、本物の近視(=真性近視)となってしまい、回復は望めない状態になってしまいます。

つまり、視力低下が始まったら、治療が早ければ早いほど視力を回復できる可能性が高まりますが、治療が遅れれば遅れるほど回復が難しくなってくるのです。

このブログ記事を読んでくださっている皆様のお子様は大丈夫でしょうか?臨時休業中に目を酷使していませんでしたか?もしかしたら、視力低下(仮性近視)が始まっているかもしれません。しかし、いつになるか分からない学校の視力健診を待っていては、視力が回復するかもしれないチャンスを逸してしまうことになり得ます。

学校が始まったら、黒板の字が見えにくくなってないかお子様に訊ねてみてください。しかし、視力低下は急激ではなく徐々に進行するため、近視の初期は本人も見えにくいことに気づいていないこともあります。他人から見て分かりやすい近視発症のサインは、テレビを見る際に目を細めて見ている仕草です。お子様の視力が低下していないか気になった保護者の方は、学校の視力健診を待たずして順伸クリニック眼科で検査を受けることをお勧めいたします。当院では仮性近視治療による視力回復アプローチ、ならびに近視進行抑制に対するアプローチを行っております。

少しでも多くの学童の方の近視が早期発見され、早期治療によって視力が回復できることを願っています。順伸クリニックでは出来る限りのサポートをさせていただきます。

近視に関する新たな遺伝子を発見

横浜市立大学眼科の研究グループが、強度近視を対象とした遺伝子解析研究を行い、近視の発症・進行に関与する新たな遺伝子を同定した、と発表されました。

研究成果の論文が、眼科の主要国際雑誌「Ophthalmology」に掲載されています。

同定できた9種類の遺伝子のうち、3種類は過去の研究から既に有力とされていた遺伝子であり、6種類が新たに同定された遺伝子である、とのことです。

詳しくはこちら↓↓

https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2020/202005meguro_OPHTHA.html

今回の研究が近視の病態解明への手がかりとなることが期待されます。

そして近未来、近視発症ならびに進行抑制の方法が確立されることを望みます。

チョイス@病気になったとき

本日、NHKEテレ内の「チョイス@病気になったとき」という番組で、「知っておきたい 近視のリスク」というテーマで近視が取り扱われました。ゲストとして東京医科歯科大学医学部眼科学講座教授の大野京子先生が出演・解説されました。大野先生は日本における近視研究の第一人者であり、私も学会やセミナーで数多く講演を拝聴させていただいている方です。本日のブログでは番組の内容をこちらで補足したうえで簡潔にまとめます。

・日本人の近視有病率が年々増えてきている。遺伝子だけでは近視の増加は説明できない。スマホやゲームなどの環境要因が大きく関わっていると思われる。

・近視には「ジオプトリ―」という単位がある(「D」と簡略化される)。-6Dを超えたものは「強度近視」に分類される。自分の近視の度数を大まかに知りたければ、片方の眼を隠した状態で顔の前に人差し指をかざし、裸眼の状態で指を遠くから目に近づける。人差し指の指紋がはっきり見えたところで指と顔の距離を測定し、16センチ(1万円札程度の大きさ)より短ければ近視度数は-6D以上と概算される。

・強度近視になると様々な病気のリスクとなる。代表が「緑内障」「網膜剥離」「脈絡膜新生血管」である。これらの病気はいずれも治療が遅れたりすれば最悪失明かそれに近い状態になってしまうおそれがある。

・これらの病気を発症するリスクを少しでも下げるために、近視の進行を抑制する取り組みが注目されてきている。近くを見る時間を出来るだけ減らしたり、1日2時間以上の屋外活動を営むことが有効とされる。

・近視が強く「脈絡膜新生血管」を発症してしまった患者を紹介。網膜の下の脈絡膜という層から、本来ないはずの血管が網膜内に進展してしまい(新生血管)、それが網膜内で出血を起こし、網膜の中心部の黄斑が浮腫を起こしてみえにくくなった。視野の中心部が波打って歪んで見えていた。抗VEGF薬という治療薬を眼球に直接注射することで新生血管を消退させ、黄斑の浮腫を改善させることができた。半数の人は1回の抗VEGF薬の注射治療で改善する。1回の注射にかかる費用は3割負担で4~5万円。

・近視があると発症しやすい疾患として先述した以外に「白内障」があげられる。ほとんどの白内障は加齢によって生じるものであるが、40~50歳代で近視に伴って生じる近視性の白内障がある。実際の患者を紹介。見え方に影響が出始めた初期の頃は眼の手術が怖かったため様子を見ていたが、白内障が進行してしまい車の運転にも支障をきたしてきたため思い切って手術を決断。手術は20分程度であっという間に終わり安全だった。術後の見え方はとても快適で、もっと早く手術を受けていれば良かった、と振り返った。

・最新の白内障手術として「多焦点レンズ」を入れる手法がある。濁った水晶体を取り除いて度数の入った人工の眼内レンズに置き換えるのが白内障の術式だが、従来のレンズは「単焦点レンズ」、つまりピントが合う位置が1点のみであった。対する「多焦点レンズ」は文字通りピントが合う位置が1点のみではないため、遠方も中間距離も近方もそれなりに見える、という利点がある。一方で、適応が限られたり、保険診療外なので治療費がかかる、という欠点もある。

・さらなる近視治療手術として、近視矯正用の眼内レンズを眼内に挿入する「ICL」という術式がある。元々備わっている水晶体を操作することなく、水晶体の手前のスペースに眼内レンズを固定する手術である。やはり保険診療外であり、両眼に手術すれば100万円ほどかかる。

・近視に関連する疾患として「コンタクトレンズにまつわるトラブル」がある。毎日のコンタクトレンズの洗浄をいい加減に済ませていると感染症を起こしやすい。そのなかでも難治性で厄介なのがアカントアメーバの感染であり、近年コンタクトユーザーによる症例が増加している。アメーバは原虫に属するので抗菌剤は効果がなく、抗真菌剤や消毒薬などの特殊な薬剤による治療が必要である。最悪の場合は改善せず角膜移植が必要になることもある。実際の患者を紹介。ある日から急に視界がぼやけ、近医眼科で点眼を処方され使用していたが改善せず、大学病院でアカントアメーバ感染症と診断され4日間入院。毎日角膜を直接削ることによってアメーバを除去して改善した。

・コンタクトレンズの管理は充分過ぎるくらい入念にやることが大切である。コンタクトレンズは高度管理医療機器であり、医師が診察したうえで処方されるべきものである。定期的な診察は必ず受けることが大切である。期限が切れた使い捨てコンタクトをいつまでも使ったりしてはいけない。また装着したまま寝てしまうことが決してないように。

 

・・・以上です。近視に関わる諸問題を45分間でコンパクトにまとめた番組内容で、視聴者にも分かりやすく伝わったものと思います。

NHKの番組HPから見逃し配信が見られます。(登録が必要)

また再放送が5月15日(金)午後0時~(正午)NHKEテレで見られます。

近視進行抑制効果が期待される天然成分「クロセチン」

本日紹介する内容は、第124回日本眼科学会総会内で主催予定だったロート製薬共催のランチョンセミナー「近視進行抑制研究の最前線」の内容の要旨です。ランチョンセミナーに参加するとついてくる弁当は当然もらえませんが、WEB配信で閲覧できただけでも収穫の内容でした。

近視進行抑制因子として、網膜内に存在するEGR1遺伝子の存在が注目されている。先日紹介した「バイオレット・ライト」の実験で用いたヒヨコの網膜を調べたところ、バイオレット・ライトを照射したことでEGR1遺伝子の発現が亢進されていたことが明らかとなった。すなわち、バイオレット・ライトによる近視進行抑制のメカニズムのひとつとしてEGR1遺伝子が関与していると考えられた。

そこで、EGR1をバイオレット・ライト以外の方法・・・食品成分として体内に取り入れることで近視進行抑制効果を示すことはできないか?と考えた。合計207種類もの食物由来天然成分、化合物をスクリーニングしたところ、サフランやクチナシに多く含まれる「クロセチン」という成分が非常に強いEGR1活性化作用を持つことが明らかとなった。このクロセチンを実験用マウスへ投与したところ、屈折の近視化だけでなく、眼軸長の伸展、脈絡厚の菲薄化(いずれも近視化の要素)も抑制されていたことが確認された。クロセチンの濃度を変えて検証したところ、マウスであれば0.001%より濃い濃度であれば有効な近視進行抑制効果が見られたことから、これを計算式を用いて人間(10歳前後の小児)の必要量に換算すると7.5mg/dayとなった。

・・・以上の研究内容を踏まえて、近視進行抑制のための栄養補助食品(サプリメント)として、慶應義塾大学医学部眼科学教室の近視研究チームがロート製薬と共同開発した製品が「ロートクリアビジョンジュニアEX」です。

先述したとおり、1日の必要量である7.5mgのクロセチンが配合されています。

今回のセミナーで学習したのですが、クロセチンには近視進行抑制効果の他にも、抗酸化作用・血流改善作用・眼精疲労を軽減する効果・睡眠障害を改善する効果・抗炎症作用・神経保護作用、etc・・・があることが過去の論文で報告されていました。

順伸クリニック眼科では、ロートクリアビジョンジュニアEXを購入することができます。飲み込む小さなカプセルタイプなので、カプセルが飲めない小さなお子様には、噛んで食べられるおやつタイプの姉妹品もあります。あわせて当院で販売しております。(最初に出たのがおやつタイプの「ロートクリアビジョンジュニア」で、より近視進行抑制作用に特化した製品として”EX”が後から販売されました。)

近視進行抑制に取り組みたいお子様と保護者の方は、どうぞお気軽に当院でお買い求めください。ホームページのサプリメントのコーナーでも紹介しています。

幼少時のテレビ視聴と学童期の視力低下の関連性

前回投稿と同様、第124回日本眼科学会総会においてWEB上で発表された演題の要約です。

幼少時における近方作業時間の増加は近視や内斜視の危険因子とされている。そこで、厚生労働省より調査対象の家庭に送付された調査票の返信内容をもとに、テレビ視聴及びその時間と小学生になってからの視力低下の関連性を分析した。

結果は、1.5歳・2.5歳の時にテレビ(ビデオ)視聴が主な遊びであった子供は、そうでない子供と比べると、その後の小学生になってから視力が悪くなった率が有意に高かった。

また、2.5歳時に1日のテレビ視聴時間が長い子供(2時間以上)は、視聴時間が短い子供(1時間未満)と比べると、その後の小学生になってから視力が悪くなった率が有意に高かった。

3.5歳・4.5歳・5.5歳時の1日のテレビ視聴時間と小学生時の視力が悪くなったこととは関連性がなかった。

結論として、1.5歳時及び2.5歳時のテレビ視聴とその後の小学生になってからの視力が悪くなったこととの関連が見られた。

・・・とのことです。

「生後の早い時期にテレビ視聴時間が長くならないように注意を喚起する必要がある」と発表では締められていました。

「近方作業」が近視を発症させる「環境因子」の大きな要因であることは間違いありません。それでは、近方作業の何が問題なのでしょうか?それは「時間」と「距離」だと思われます。つまり、近方作業をする時間が長ければ長いほど(続けるほど)近視になりやすく、見る物と目の距離が近ければ近いほど近視になりやすいのです。(理由は当ブログで後日紹介します。)

ですから、近視による視力低下でクリニックを受診された児童の方と保護者には、「勉強でもゲームでも、近くを見る時は時間が長く続かないように、適宜休憩を挟んで眼を休めましょう」「見る物と目の距離が近くなり過ぎないように30センチ以上距離を取りましょう」とアドバイスさせていただいています。

近代社会において、近方作業を一切行わずに生活していくのは至難の業です。そもそも、学生の本分である座学による勉強こそが近方作業の最たるものです。中学生になったらほとんどの学生が携帯・スマホを所持するでしょうし、小学校でもタブレット型電子機器を用いて授業を行っているところもあります。いまや就学前の幼稚園児を対象としたタブレット型の学習機器もあるほどです。つまり、現代を生きる子供達は近方作業とは最早どうやっても離れられないのです。では、近視を予防するためにはどうすれば良いのか?近方作業を営みながら、近視進行抑制のアプローチに取り組むしかありません。

前回は「屋外活動」について、今回は「近方作業環境の改善」について、近視進行抑制の観点から実際に発表された演題と絡めながら紹介しました。次回は「栄養成分(サプリメント)」について紹介します。

近視と屋外活動の関連性

屋外活動が近視進行抑制に重要であることはこれまで世界各国で発表された多くの研究から明らかになっています。

すなわち、屋外で過ごす時間が長い小児は近視になりにくいということです。

過去のある論文では、6歳前後に屋外で過ごした時間の長さが近視発症予防に重要である可能性が示唆されており、また12歳児を研究対象とした別の論文では、屋外活動が少なく近方作業時間が長い小児は、近方作業時間が少なく屋外活動時間が長い対照群より有意に近視を発症しやすい、とされています。

なぜ屋外活動が近視進行抑制に関与するのか?太陽光に含まれるバイオレットライトが網膜内の近視進行抑制因子をもつ遺伝子の発現を亢進させる、という「バイオレット仮説」に基づいた研究などが進んでいますが、未だはっきりとは解明されていません。

今回の学会の「近視研究」のセッションにおいて、都内某私立中学校の生徒の近視度数を実際に測定し(非近視群、近視群、強度近視群の三群に分類)、かつアンケート調査により得られた過去の屋外活動時間(未就学時、小学校低学年時、小学校中学年時、小学校高学年時)との関連性を検討した研究結果が発表されていました。

結果は、「小学校高学年児の屋外活動時間に三群間(非近視群、近視群、強度近視群)で有意差を認めた」とのことです。このことから、中学生における近視の度数は、小学校高学年時における屋外活動時間と関連性がある可能性が示唆された、と結論づけられています。

分かりやすく言うと、小学校中学年時以下の屋外活動時間の差と中学生になってからの近視度数との関連性は証明できなかった(有意差はなかった)一方で、小学校高学年時の屋外活動時間に差があると、それがそのまま中学生になってからの近視度数に関連付けられる(有意差があった)・・・この時期の屋外活動時間が少なければ少ないほど近視度数が強くなりやすい、ということです。つまり屋外活動が近視進行抑制に重要なのは大前提であり、そのなかでも小学校高学年時の屋外活動時間がその後の近視進行を最も左右する可能性があるのです。

近視の進行をできるだけ防ぐためには、小学校低学年時・中学年時だけでなく、小学校高学年(5年生・6年生)になっても引き続き外で遊ぶ時間を設けたほうが良いのですね。中学年時までは外で遊ぶ習慣があっても、高学年になって止めてしまっては中学生になってから近視がどんどん進行してしまう可能性があるわけです。

・・・しかしながら現実には、中学受験に臨む生徒は、小学校5年生頃から猛烈な受験勉強が始まるために塾通いなどで屋外活動時間が減少してしまうのはやむを得ないでしょう。一定の屋外活動時間がどうしても得られない受験生(に限らず、あまり外で遊ぶ習慣がない小学生)に対しては、点眼やワックなどの近視進行抑制のためのアプローチ法が積極的に導入されるべきであると考えます。