オルソケラトロジー

オルソケラトロジーレンズは近視矯正のために開発された特殊な形状のハードコンタクトレンズです。通常のコンタクトレンズはソフトレンズでもハードレンズでも朝起床してから装着して夜就寝前に外すものですが、オルソケラトロジーレンズは就寝前に付けて、装着したまま睡眠を取り、起床後に外す、という使用法です。そのため、ナイトレンズと呼ばれることもあります。

オルソケラトロジーレンズを一定時間装用すると、角膜(くろめ)をわずかに扁平化(平らに)させることが出来ます。角膜の形状の微妙な変化によって屈折が変わり、近視矯正効果が得られます。それまで眼鏡やコンタクトレンズを必要とした方でも、オルソケラトロジーレンズを用いれば日中裸眼で快適に見ることが出来るようになります。そのため、球技などのスポーツに取り組んでいる方や、眼が乾きやすい方や花粉症などのアレルギーで悩んでいる方にはおすすめといえるでしょう。

日本眼科学会のガイドラインでは適応は-4.00Dまでの近視度数となっており、-4.00Dを超える近視の場合は、完全矯正効果が得られない可能性があります。つまり、近視の方の全てに適応があるわけではない、ということが注意点です。

また、同ガイドラインには、年齢は原則として20歳以上であり、20歳未満には慎重処方、となっています。当初は、LASIKと同じく20歳以上のみが適応となっていましたが、研究の結果オルソケラトロジーには近視進行抑制効果があるということが分かり、であるならば近視が進行する小児・学童にこそ適応すべきではないのか、との考えが広まった結果、未成年にも門戸が開かれるようになった、という背景があります。

私個人の意見ですが、オルソケラトロジーの最大の魅力はやはり近視進行抑制効果が得られることであると考えます。これは眼鏡や普通の単焦点コンタクトレンズにはない特徴です。同じ近視矯正をするのであれば、日中裸眼で過ごせるようになり、かつ近視進行抑制効果も得られるオルソケラトロジーレンズをぜひ使ってみたいと思いませんか?

順伸クリニック眼科では、オルソケラトロジーを今年の8月から導入いたしました。興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。当院での料金体系は以下のとおりです。

①適応検査代金 5000円

レンズデータを決定するために必要な検査一式を行います。

②トライアル代金 25000円(片眼の場合は12500円)

1週間トライアルレンズを貸し出しして、ご自宅で毎晩装用していただき近視矯正効果を確認します。

③レンズ代金 100000円(片眼の場合は50000円)

トライアルの結果にご満足であれば、レンズを購入いただけます。

レンズ購入を見送られる場合、トライアル代金の25000円は返還いたします。

以上、レンズを購入する場合にかかる総費用は130000円となっております。

これには最初の1年間の定期検査代、最初の1年間のレンズ紛失・破損時の補償も含まれています。

放課後にモンスターたちがこんな○○は嫌だをやってみた

日本眼科医会、日本コンタクトレンズ学会が共同で制作したコンタクトレンズの正しい使用法の啓発動画が公開されています。

「放課後にモンスターたちがこんな○○は嫌だをやってみた」

https://youtu.be/tgB3bRLXXaU

コンタクトレンズは「高度管理医療機器」であり、定期的な医師の診察を受けたうえで正しく使用することが求められます。当院でコンタクトレンズを購入された方は、3ヶ月に1回程度の定期診察を受けるよう指導させていただいております。

動画内のような誤った使用法をなさらないようくれぐれもお願いいたします。

チョイス@病気になったとき

本日、NHKEテレ内の「チョイス@病気になったとき」という番組で、「知っておきたい 近視のリスク」というテーマで近視が取り扱われました。ゲストとして東京医科歯科大学医学部眼科学講座教授の大野京子先生が出演・解説されました。大野先生は日本における近視研究の第一人者であり、私も学会やセミナーで数多く講演を拝聴させていただいている方です。本日のブログでは番組の内容をこちらで補足したうえで簡潔にまとめます。

・日本人の近視有病率が年々増えてきている。遺伝子だけでは近視の増加は説明できない。スマホやゲームなどの環境要因が大きく関わっていると思われる。

・近視には「ジオプトリ―」という単位がある(「D」と簡略化される)。-6Dを超えたものは「強度近視」に分類される。自分の近視の度数を大まかに知りたければ、片方の眼を隠した状態で顔の前に人差し指をかざし、裸眼の状態で指を遠くから目に近づける。人差し指の指紋がはっきり見えたところで指と顔の距離を測定し、16センチ(1万円札程度の大きさ)より短ければ近視度数は-6D以上と概算される。

・強度近視になると様々な病気のリスクとなる。代表が「緑内障」「網膜剥離」「脈絡膜新生血管」である。これらの病気はいずれも治療が遅れたりすれば最悪失明かそれに近い状態になってしまうおそれがある。

・これらの病気を発症するリスクを少しでも下げるために、近視の進行を抑制する取り組みが注目されてきている。近くを見る時間を出来るだけ減らしたり、1日2時間以上の屋外活動を営むことが有効とされる。

・近視が強く「脈絡膜新生血管」を発症してしまった患者を紹介。網膜の下の脈絡膜という層から、本来ないはずの血管が網膜内に進展してしまい(新生血管)、それが網膜内で出血を起こし、網膜の中心部の黄斑が浮腫を起こしてみえにくくなった。視野の中心部が波打って歪んで見えていた。抗VEGF薬という治療薬を眼球に直接注射することで新生血管を消退させ、黄斑の浮腫を改善させることができた。半数の人は1回の抗VEGF薬の注射治療で改善する。1回の注射にかかる費用は3割負担で4~5万円。

・近視があると発症しやすい疾患として先述した以外に「白内障」があげられる。ほとんどの白内障は加齢によって生じるものであるが、40~50歳代で近視に伴って生じる近視性の白内障がある。実際の患者を紹介。見え方に影響が出始めた初期の頃は眼の手術が怖かったため様子を見ていたが、白内障が進行してしまい車の運転にも支障をきたしてきたため思い切って手術を決断。手術は20分程度であっという間に終わり安全だった。術後の見え方はとても快適で、もっと早く手術を受けていれば良かった、と振り返った。

・最新の白内障手術として「多焦点レンズ」を入れる手法がある。濁った水晶体を取り除いて度数の入った人工の眼内レンズに置き換えるのが白内障の術式だが、従来のレンズは「単焦点レンズ」、つまりピントが合う位置が1点のみであった。対する「多焦点レンズ」は文字通りピントが合う位置が1点のみではないため、遠方も中間距離も近方もそれなりに見える、という利点がある。一方で、適応が限られたり、保険診療外なので治療費がかかる、という欠点もある。

・さらなる近視治療手術として、近視矯正用の眼内レンズを眼内に挿入する「ICL」という術式がある。元々備わっている水晶体を操作することなく、水晶体の手前のスペースに眼内レンズを固定する手術である。やはり保険診療外であり、両眼に手術すれば100万円ほどかかる。

・近視に関連する疾患として「コンタクトレンズにまつわるトラブル」がある。毎日のコンタクトレンズの洗浄をいい加減に済ませていると感染症を起こしやすい。そのなかでも難治性で厄介なのがアカントアメーバの感染であり、近年コンタクトユーザーによる症例が増加している。アメーバは原虫に属するので抗菌剤は効果がなく、抗真菌剤や消毒薬などの特殊な薬剤による治療が必要である。最悪の場合は改善せず角膜移植が必要になることもある。実際の患者を紹介。ある日から急に視界がぼやけ、近医眼科で点眼を処方され使用していたが改善せず、大学病院でアカントアメーバ感染症と診断され4日間入院。毎日角膜を直接削ることによってアメーバを除去して改善した。

・コンタクトレンズの管理は充分過ぎるくらい入念にやることが大切である。コンタクトレンズは高度管理医療機器であり、医師が診察したうえで処方されるべきものである。定期的な診察は必ず受けることが大切である。期限が切れた使い捨てコンタクトをいつまでも使ったりしてはいけない。また装着したまま寝てしまうことが決してないように。

 

・・・以上です。近視に関わる諸問題を45分間でコンパクトにまとめた番組内容で、視聴者にも分かりやすく伝わったものと思います。

NHKの番組HPから見逃し配信が見られます。(登録が必要)

また再放送が5月15日(金)午後0時~(正午)NHKEテレで見られます。